睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群
①当院の睡眠時無呼吸症候群外来の特徴
当院では睡眠時無呼吸の検査を全てご自宅で行っていただくことが可能です。保険診療の制度上、まずは睡眠時無呼吸の簡易検査をご自宅で2日間実施いただきます。さらに精密検査が必要と判断された場合には、ご自身で着脱可能な精密検査機器をご自宅にて1日実施いただく流れとなります。お仕事やご家庭の事情により、入院での精密検査が難しい方にはお勧めの検査方法です。治療は主にCPAP療法(睡眠中に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を開存させて治療します)となります。私自身が試験的にCPAPを使用した経験を基に、効果的な使用方法をアドバイスさせていただき、最終的にはCPAPを使用せずとも無呼吸が緩和される方法について一緒に考えていきます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、寝ている間に一時的に呼吸が止まる疾患です。睡眠中、平均して1時間に5回以上起こり、それぞれ呼吸停止が10秒以上認められる場合には、この疾患の可能性があります。代表的な症状は“いびき”で、眠りが浅くなるため、日中に強い眠気や倦怠感を生じることがあります。放置すると、血管・心臓・脳に大きな負担がかかり、高血圧症や狭心症、心筋梗塞、脳卒中などを合併することもあります。できるだけ早く診断し、治療をはじめることが大切です。
原因には鼻から喉頭(のどぼとけ)にかけての狭窄があります。狭くなった気道のすき間を空気が通ることで“いびき”が生じます。いびきの要因は、肥満による首や喉(のど)まわりの脂肪沈着、あごが十分発育していない小顎症(しょうがくしょう)、扁桃肥大、舌根(ぜっこん)・口蓋垂(こうがいすい)・軟口蓋(なんこうがい)による狭窄など、解剖学的なものがあります。また、アレルギー性鼻炎などで鼻が詰まり、夜間に口呼吸となることで、下顎が気道を狭くするのも原因の一つです。さらに、加齢や睡眠時における呼吸の調節能力の低下など、機能的な要因も関連します。
睡眠時無呼吸症候群は、男性は30~60代によくみられ、女性は更年期以降に多く、閉経によるホルモンバランスの変化も一因とされています。
・就寝時
いびきがひどい、呼吸が止まる・むせる、息苦しさを感じる、寝相が悪い、寝汗をよくかく
・起床時
頭が痛い、口が乾いている、いくら寝ても疲れがとれない、熟睡感がない、体が重く感じる
・日中
強い眠気、だるさ・倦怠感、集中力の低下、記憶力の低下、いつも疲れている、居眠りで支障をきたす(自動車の運転で事故を起こしそうになるなど)
当院での検査は前述の通り、ご自宅で実施可能です。2日間行う簡易検査と、1日で行う精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査:PSG検査)があります。簡易検査は手指や鼻下にセンサーを装着し、睡眠中の無呼吸の回数や体内酸素濃度の低下、睡眠中のいびきを調べます。精密検査ではさらに脳波計を付け、顎・胸郭・腹部にもセンサーを装着することで、就寝中の脳の働きと無呼吸の関係や、仰臥位や側臥位での無呼吸の出方の違いまで詳細な解析を行います。簡易検査は重症な睡眠時無呼吸症候群の発見に有効ですが、軽症や中等症例については、精密検査が適しています。
治療には対症療法と根治療法があり、症状の程度や原因に応じて選択します。代表的な対症療法には、CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)とマウスピース療法があります。
・CPAP (シーパップ) 療法
CPAP療法は中等度から重症度に有効な治療法です。睡眠中に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を開存させて治療します。睡眠中の無呼吸・いびきが減少し、眠気の改善や血圧を下げる効果も期待できます。
・マウスピース療法
マウスピース療法は軽症度に適した治療法です。当院では実施しておりませんが、睡眠時にマウスピース(スリープスプリント)を装着し、下あごを前方に出すように固定することで、上気道を広く保ち、無呼吸やいびきの発生を防ぎます。
・根治療法
原因が肥満の場合は減量が根治療法であり、対症療法を組み合わせて進めます。あごの小ささや扁桃肥大などが原因の場合は、手術が根治療法となります。鼻疾患を有している場合、マウスピースやCPAP療法で十分な効果が得られないことがあります。このような場合も手術が検討されます。
このほかに、口呼吸の予防・治療に有効な口腔筋機能療法や、寝る向きを矯正する体位療法などが有効なこともあります。
3割負担の場合の標準金額(治療内容によって金額が変わることがあります)
【簡易検査】
2,700円(税込)
【終夜睡眠ポリグラフ検査】
11,250円(税込)
【CPAP治療】
毎月3,930円(税込)
※毎月受診いただき、CPAPの使用状況をフィードバックし、改善すべき点の指導を行います。
睡眠時無呼吸症候群は大きく分けて2種類あります。一つは、呼吸運動は保たれているものの、上気道のどこかの閉塞によって、鼻・口の気流が停止する「閉塞性」の睡眠時無呼吸です。もう一つは呼吸運動そのものが停止する「中枢性」の睡眠時無呼吸です。「閉塞性」は世界的にも有病率が高く、様々な循環器疾患と関連することがわかっています。
・高血圧と閉塞性睡眠時無呼吸
閉塞性睡眠時無呼吸(以下、閉塞性)は、高血圧の原因になる可能性があり、閉塞性の患者さんの半数に高血圧が認められ、高血圧患者さんの3割に閉塞性が認められるという報告もあります。また、薬物治療に抵抗性のある高血圧症に、閉塞性が隠れている可能性も指摘されています。
・心不全と閉塞性睡眠時無呼吸
閉塞性は心臓に負担がかかり、心機能を低下させる可能性があります。心不全患者さんに閉塞性が合併しやすいことや、閉塞性を合併している心不全患者さんでは、閉塞性を治療しない場合、死亡率が格段に高まるという報告もあります。
・脳卒中と閉塞性睡眠時無呼吸
閉塞性は脳卒中の発症リスクが高まるとされています。とくに50歳以上では、脳卒中および死亡リスクが閉塞性でない方の約2倍という報告もあります。
・不整脈と閉塞性睡眠時無呼吸
閉塞性は不整脈を合併することが多く、無呼吸の増加や低酸素血症の悪化に伴い、合併頻度も高まります。とくに夜間の不整脈は、半数近くの閉塞性患者さんに認められ、重症度では、その発症リスクが2〜4倍に高まるとされています
・虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)と閉塞性睡眠時無呼吸
冠動脈疾患を有する方が閉塞性を合併する率は、冠動脈疾患のない方の約2倍といわれています。
医師の診察前にスタッフが事前問診を行います。睡眠時の状態は、睡眠障害となる精神的ストレスや心の問題のほか、鼻や口から肺までの空気の通り道がきちんと確保できているかなど、器質的な問題が密接に関係しています。問診ではご記入いただいた問診票をもとに、精神面、身体面にわたってお話をうかがいます。
※他院を受療中で、睡眠導入剤などの薬剤処方を受けている方は、事前にお申し出ください。